治療について

血友病患者さんでは血液凝固第VIII(8)因子または第IX(9)因子が不足したり、はたらきが悪くなっていて、出血したときに血が止まりにくくなっています。このはたらきのことを「活性」といいます。そのため治療法として、「補充療法」といって不足している血液凝固因子を補う方法が行われています。

しかし、血液凝固因子は体の中に一度入れてしまえばOKというわけにはいかず、入れても徐々にその量が減ってしまう性質があります。例えば一般的に、第VIII因子であれば8〜14時間、第IX因子であれば16〜24時間経つと、血液中のそれぞれの血液凝固因子の活性は半分になってしまいます1)。この活性が半分になってしまうまでの時間を「半減期」と呼びます。

血液凝固因子をどのタイミングでどのように補充するかは出血の具合や、人それぞれの生活、補充する血液凝固因子の半減期などによって異なっていて、主に血友病の補充療法は3つの方法に分けることができます。

1) 日本血栓止血学会:インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン 2013年改訂版

3つの補充療法

定期補充療法

現在、中心となりつつある治療法です。定期的に血液凝固因子を補充することで、日ごろからの出血を予防していく治療法です。年齢や生活、凝固因子製剤の種類によっては、頻繁に輸注をしなければならないことが欠点ですが、血液中の血液凝固因子を常にある程度保つことで、出血を減らすことができ、将来的に関節を悪くする危険性を減らすこともできます。また、現在の関節の状態を維持したり、改善できるという報告もあります。普段の生活も、他の人たちと変わらない活動ができるようになります。

出血時補充療法

出血が起こったときに血液凝固因子を補充する治療法です。出血は血友病性関節症の原因となるため、出血した際はできるだけ早期に補充することが重要です。

予備的補充療法

激しいスポーツなど、出血する可能性が高い活動の前に、予防的に血液凝固因子を補充する治療法です。出血を防ぐとともに、出血しても程度を軽くすることができます。

いずれの方法も、輸注を行ったら必ず記録表に記録することが重要です。どの製剤をいつ、どのくらい輸注したかの情報は、何かあったときに医師のカルテと同じような貴重な情報源となるためです。

また、この他に、出血した場合の補助的治療として「RICE」と呼ばれる処置も必要となります。

知っておきたい血液凝固因子の特徴

「補充療法」を行う場合、血友病Aには血液凝固第VIII因子製剤、血友病Bには血液凝固第IX因子製剤の補充が行われます。

第VIII因子と第IX因子はそれぞれ異なる特徴を持っています。

それぞれの凝固因子の特徴を確認し、あなたに合った治療法を選択しましょう。

血液凝固因子製剤の作り方と
インヒビター

以前は、他の人から採血された血液から第VIII因子や第IX因子を抽出して、凝固因子製剤を作っていました。しかし、採血された血液から製造された凝固因子製剤は理論上、感染症のリスクを完全になくすことはできないため、現在では遺伝子組換え技術を利用して製造された凝固因子製剤が多く使われています。