血友病治療の歴史

血友病治療の歴史 現在、凝固因子製剤による補充療法によって適切に治療を行えば、安全に、健康な人と同じような生活が送れるようになった血友病ですが、ほんの50年前には、治療薬さえない病気でした。

1960年代以前、血友病の治療は「輸血」しかありませんでした。大量の血液を輸血しても効果は十分でなく、患者さんの多くは激しい痛みや慢性的な障害に苦しんでいました。

1965年アメリカで、ヒトの血液の中から第Ⅷ因子が非常に濃縮された部分を取り出す方法が開発され、それを使って「クリオプレシピテート(略称クリオ)」という製剤が開発されて、日本でも販売が開始されました。クリオは軽症~中等症の出血には効果がありましたが、重症の出血にはまだ不十分な薬でした。そこで、

1970年代終わりに、このクリオを原料として、第Ⅷ因子をより高濃度に含む薬が開発されました。この「第Ⅷ因子濃縮製剤」は、少ない薬量で効き目が強く、重症の出血にも効果があったので、急速に普及し、手術など大きな出血の止血にも使われるようになりました。

1980年代になると、この薬を使って自分で(または家族が)注射をする「家庭療法」が導入され、普及はさらに進みました。しかし一方で、原料や製剤を輸入に頼っていたために、汚染された凝固因子製剤を使用した多くの患者さんが、C型肝炎やB型肝炎、HIVに感染しました。当時の血友病患者さんの約4割がHIVに感染し、「薬害エイズ訴訟」という大きな社会問題になりました。これを教訓として新薬の開発が進み、

1985年、加熱処理によってウイルスを殺した第Ⅷ因子濃縮製剤が発売されました。その後もさまざまなウイルス除去やウイルス不活化(働きをなくすこと)の技術が開発されて、凝固因子製剤の安全性は格段に高まりました。さらに、

1990年代になると、ヒトの血液を原料としない(つまり血液感染の心配がない)遺伝子組換え技術を使った凝固因子製剤が開発されました。当初は製造の過程でハムスターなどの動物の細胞が使われていたため、未知のウイルス感染などの心配がありましたが、

2007年、動物の細胞を一切使わない方法が開発され、安全性はいっそう高まっています。

遺伝子組換えによる凝固因子製剤の開発は、現在も日々進められており、2014年には、これまでより長い時間効き目が持続する「長時間作用」の凝固因子製剤も、開発に成功しています。

遺伝子組換え技術の使用

動物由来原料を使用しないためウイルス感染リスクが低減

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