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血友病患者さんの充実した人生のために。
「ヘモフィリアToday」では、患者さんとご家族の方々、そして患者さんをサポートされる方々のお役に立つ、血友病関連情報をお届けしてまいります。

お役立ち情報

デンタルケアについて 【監修】広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 小児科学 教授小林 正夫 先生

「歯医者さんは出血がこわいから…」そんな理由で、虫歯や歯周病の症状があってもつい受診を先のばしにしていませんか。確かに、口の中は血が止まりにくいのでできるだけ出血を避けたい場所ですが、虫歯や歯周病は重症化するほど、出血の原因になります。デンタルケア(歯と歯ぐきのケア)は、出血リスクを減らす大切な習慣なのです。主治医と相談のうえ、幼少期から、かかりつけの歯科をつくっておきましょう。

口の中で出血が起こるのはどんなとき?

口の中の出血の原因には、次のようなものがあります。

幼児〜小児期

誤って口の中や舌を噛んだとき、転んで口を打ったとき

小さな子どもは口の中の動きがおぼつかないため、会話中や食事中に誤って口の中や舌を噛むことがあります。また、顔から転んで口の中を切ることがあります1)

歯の生え変わりのとき

乳歯から永久歯に生え変わるときは、出血しやすくなります。また乳歯がぐらぐらしているとき、自然に抜けるのを待たず無理に歯を抜くと、出血が多くなる場合があります2)

虫歯が原因の歯ぐきからの出血

虫歯がひどくなると、歯ぐき(歯肉)周囲や歯周組織まで進行し、歯肉炎や歯周炎を起こして出血しやすくなります。

青年期〜成人

歯周病が原因となる歯ぐきからの出血

「歯周病」とは、歯を支える歯ぐき(歯肉)や骨(歯槽骨)などの「歯周組織」といわれる部分が炎症で壊れていく病気です。初めは歯ぐきの炎症(歯肉炎)だけですが、進行すると「歯周炎」となり、最後は歯を支えている骨まで壊されて歯がぐらぐらになります。歯ぐきは炎症を起こしているため、食事や歯みがきなどの刺激で容易に出血します。

抜歯など、外科的な処置を行うとき

虫歯が歯根まで進行していたり、親知らずが炎症を繰り返していた場合など、歯科で歯を抜かなくてはならないことがあります。抜歯前や抜歯後に凝固因子製剤を投与する、また止血剤を服用するなど、十分な準備が必要になります。主治医と歯科医によく相談しましょう。

出血したら…

  • 出血した場合は、まず出血部位を確認し、清潔なガーゼや綿を当てて圧迫します。
  • 圧迫しても血が止まらなかったり出血がひどいときは、圧迫した状態で主治医に連絡し、指示を仰いでください。止血剤(トラネキサム酸など)凝固因子製剤の投与などが必要な場合があります。

血友病患者さんのデンタルケア1,3,4,5)

血友病の人は、高齢になる前に歯を失う人が少なくないといわれています。出血が心配で歯みがきをしっかりできなかったり、治療時の出血をおそれて歯科を避ける傾向があるため、虫歯や歯周病が重症化しがちです。しかし、きちんとケアされた歯ぐきは歯みがきなどで出血することはありません。また、虫歯や歯周病は早めに受診すれば出血するような治療を受けずにすみますし、出血するまで気がつかないような病気の進行も防ぐことができます。血友病の人にこそ、歯科と日頃のデンタルケアに親しんでほしいのです。

虫歯と歯周病予防のケア習慣

虫歯や歯周病は、毎日のケアで予防ができる病気です。習慣として身につけ、健康で丈夫な歯と歯ぐきを保つことで、口の中の出血も防ぐことができます。ケアのポイントは、次のようなことです。

  • フッ素配合の歯みがきで、できれば毎食後、1日最低2回、歯みがきをしましょう(フッ素には歯を強くし、虫歯を防ぐ働きがあります)。
  • 食事や甘いものをだらだらと食べないこと。食事は決まった時間に食べ、糖分や酸を含む果物やスポーツドリンクなどは、できれば食事のときだけにしましょう。
  • よく噛んで食べましょう。
  • 歯みがきは、磨き残しがないようしっかりと。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシも使いましょう。
  • 歯みがきや口のマッサージ、あごのマッサージなどの刺激で唾液の分泌を促すと、唾液がもっている歯と歯ぐきによいさまざまな働きの活性化が期待できます。
  • かかりつけの歯科医をもち、定期的に(6ヵ月に1回くらい)検診を受けましょう。

年代別のポイント

デンタルケアには、年代によって気をつけたいポイントがあります。

乳歯が生えそろった頃

歯みがきの習慣を身につける年代です。本人だけでは不十分なので、必ず保護者が仕上げ磨きをしましょう。健康な歯ぐきはブラッシングで出血することはないので、こわがらずしっかり磨いてください。毎食後と寝る前の4回が基本です。磨く時間は短くてもよいので、「食べたら磨く」という習慣をつけましょう。

生え変わりの時期

乳歯が抜けるときは、出血しやすくなります。抜ける前に凝固因子製剤などを投与したほうがよい場合がありますので、主治医と歯科医に相談してみましょう1)
生えたばかりの永久歯は虫歯になりやすいので、磨き残しがないよう、しっかり磨きましょう。

青年期以降

大人になってからは、歯周病予防に力を入れる必要があります。歯と歯ぐきの間、歯と歯の間など、歯ブラシだけでなくデンタルフロスや歯間ブラシなども使って、しっかり磨きましょう。今は歯周病の治療法も進歩しています。兆候を少しでも感じたらすぐに、進行していても諦めずに、歯科を受診してください。

歯医者さんへ行こう

初めて歯科にかかるときは、まず血友病の主治医に相談してみましょう。重症度によっては、総合病院や専門的なスタッフのいる歯科で治療をした方がよい場合がありますし、血友病の患者さんの治療経験がある歯科医とネットワークがあって紹介してもらえることもあるでしょう。いずれにしても、血友病の主治医と歯科医は、密に連携することが大切になります。

歯科で初めて治療する場合は、次のような情報をあらかじめ伝えておきましょう。

  • 血友病の種類、重症度、現在の治療方法(凝固因子製剤の使用状況)
  • 感染症の有無
  • 口の中の出血をしたことがあるか
  • 歯科の治療歴、抜歯の経験とその際の治療法
  • 血友病のかかりつけ病院と主治医の名前、連絡先

血友病の患者さんは、こまめな歯の手入れが大切です。デンタルケアの基本は「定期検診」ですので、ぜひかかりつけの歯科医をもち、定期的に通うようにしましょう。

  • 参考資料
  • 1)松本宏之:Frontiers in haemophilia. 2016; 3(1): 29-30
  • 2)吉田朔也:日本口腔科学会雑誌1969; 18(1): 1-28
  • 3)Brewer AK, et al.:Haemophilia. 2003; 9(6): 673-637
  • 4)小方清和:小児歯科臨床 2016; 21(12): 54-58
  • 5)石黒精ほか(編):血友病診療実践マニュアル;診断と治療社

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