
血液凝固科 医長 小倉 妙美 先生
血液のさまざまな成分
赤血球
赤血球は、人間が生きていくために必要な酸素を運ぶ役目をもつ。口や鼻から吸いこんだ空気にふくまれる酸素を、赤血球が肺で受けとり、血管を通って全身に届けているんだ。
白血球
白血球はバイ菌やウイルスなど、体の外から入ってきたよそ者から、体を守る役目をもつ。力強くてたのもしいけれども、ときどき仲間をよそ者とかん違いすることもある。
血小板
血小板は血管が傷ついて出血したときに、血管にあいた穴をふさいで出血を止める役目をもつ。出血を止めることを止血と呼ぶが、止血には血小板の他にもさまざまな物質がかかわっている。
血液凝固因子
血液凝固因子は、血小板とともに止血に重要な役割をはたしている。凝固因子にはいくつかの種類があり、それらが協力して止血している。血友病では、このいくつかの凝固因子のうち、1種類だけが不足しているんだ。
栄養分
口から食べた食物は、細かく分解されて栄養分になったあと、腸で血管の中に取りこまれる。腸で取りこまれた栄養分は、血液の流れに乗って全身に運ばれ、運動や勉強するためのエネルギーになったり、体をつくる材料として使われる。
止血の3ステップ
血小板が集まって血管の穴をふさぐ
血管が傷つくと、傷ついた血管のかべに血小板が集まってきて、血栓と呼ばれるかたまりができ、血管の穴がふさがる。
フィブリンを作り、血栓をよりじょうぶなフタにして止血する
血小板でできたかたまり(血栓)は、実はあまり強くない。そこで血液凝固因子がフィブリンと呼ばれる繊維を作って、血栓をもっと強くてかたくてじょうぶなフタにする。こうして傷口がしっかりふさがるんだ。
血管のかべを修理したあとに、血栓を
溶かして、もと通りにする
血管の穴がふさがったら、傷ついた血管のかべを修理する。修理が終わったら、役目を終えた血栓を溶かして、もと通りの血管に戻すんだ。
血液凝固因子がフィブリンを作るしくみ
血液凝固因子の役目は、血栓をじょうぶにするフィブリンを作ること。どの凝固因子もふだんは眠っているけれども、出血がおきたことがわかると、凝固因子たちはリレーのように次の凝固因子を起こしながら、「フィブリンを作れ!」という命令(バトン)を伝えていく。この命令が最後までしっかり伝わってはじめて、フィブリンを作ることができるんだ。
血友病
血友病では、第VIII(8)因子または第IX(9)因子が他の人よりも不足している。そのため、リレーの走者が足りなくて命令が伝わらないので、フィブリンを作り出すことができないんだ。大事なのは、血友病の人はフィブリンが作れなくて止血しにくくなるだけで、出血しやすくなるわけではない、ということ。間違えやすいのでしっかり覚えておこう。日本では2016年の時点で、第VIII因子が不足している血友病Aは5,103人、第IX因子が不足している血友病Bは1,097人いて、そのほとんどが男性なんだ。
血友病の人は、うまくフィブリンが作れなくて止血しにくい
(× 出血しやすい)
公益財団法人エイズ予防財団:
血液凝固異常症全国調査 平成28年度報告書
凝固因子活性
凝固因子活性は、どの程度、はたらいている凝固因子をもっているかを表す値だ。具体的には、血友病でない(一般の)人の凝固因子活性を100%として、その半分しかはたらいている凝固因子をもっていなければ50%といった具合に表す。はたらいている凝固因子がどのくらい少ないかで、軽症、中等症、重症といった「重症度」が決まっていて、止血のしにくさも変わってくるんだ。
重症度 | 凝固因子活性 |
---|---|
軽症 | 5%以上(40%以下) |
中等症 | 1%以上5%未満 |
重症 | 1%未満 |
凝固因子活性は、どの程度、はたらいている凝固因子をもっているかを表す!
自分のもともとの凝固因子活性を知ろう!
凝固因子活性 → ◯%
重症度 → 軽症・中等症・重症
MAT-JP-2104126-1.0-04/2021