血友病とは
血友病性関節症を防ぐ5つのポイント
【監修】医療法人財団 荻窪病院 血液凝固科
鈴木 隆史 先生
血友病性関節症を防ぐ5つのポイント
身体全体の悪循環
血友病では、関節内出血が繰り返し起きることで、身体全体にも悪循環が生じる可能性があります。
血友病の関節内出血は、ひじ関節にもみられますが、比較的体重がかかりやすい、ひざや足関節に多い傾向があります。
ひざ関節に出血が起きると、安静のために歩行が制限または禁止されるため、ひざ以外の関節も動かさなくなり、関節の可動域が狭くなります。そのため、身体の柔軟性が失われ、関節に負担をかけることにつながります。また安静にすることで身体の筋肉も衰えるので、さらに関節への負担が増してしまいます。
悪循環を断ち切るために
このような関節内出血による悪循環を断ち切るためには、定期補充療法によって関節内出血を予防すること、また関節内出血が起きてもすぐに補充療法を行い止血すること、そして普段は運動をして筋肉を付け、関節の負担を減らすことがとても重要になります。さらには、定期的に整形外科を受診して関節の状態を診てもらうことや、理学療法(リハビリテーション)で関節機能を回復・維持することも大切です。
血友病性関節症にならないための5つのポイント
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定期補充療法で関節内出血を予防する
定期補充療法には、血友病性関節症を予防する効果がある。
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関節内出血が起きたら、すぐに補充療法を行い止血する
関節内の出血量を最小限に食い止めることで、滑膜の増殖を最小限にできる。
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普段は運動をして筋肉をつけ、関節の負担を減らす
ボクシングなどのコンタクトスポーツは推奨されないが、普段から自分にあった運動をすること。運動の前には必要に応じ予備的補充療法を行って、出血を予防することも忘れずに。
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定期的に整形外科を受診し、関節の状態を見てもらう
以前と変わっていないことを確認することが大事。
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理学療法(リハビリテーション)で、関節機能を回復・維持する
出血後は痛みがなくなってから。ポイントはコツコツ継続すること。
定期的に整形外科を受診しましょう
血友病性関節症は出血してすぐになるわけではなく、月単位・年単位で進むと考えられています。また関節症になっていても、出血が以前に起きていたことを自覚していない場合もあります。
そのため、自分の関節の状態をきちんと把握して、適切な治療を受けるためにも定期的に整形外科を受診して、レントゲンなどの画像診断で関節を診てもらうことが重要です。成人では、Target Joint(標的関節)になっている関節は、6ヵ月に1回は診てもらうのが良いといわれています1)。何度受診しても変わらないからと、受診を途中でやめてしまうケースもみられますが、関節症の定期検診では、「以前と変わっていない」ことを確認することが大切です。
また、筋肉内の血のかたまりである、血友病性偽腫瘍や血友病性嚢腫(のうしゅ)を早めに発見して評価するためにも、定期的な受診が必要です。
理学療法を続けて関節機能の回復・維持へ
理学療法とは、筋力訓練(いわゆる筋トレ)などの運動療法と、マッサージ・電気などの物理療法などを組み合わせて、運動機能の回復をはかる治療法のことです。血友病では、出血を起こさずに関節の機能を回復・維持することなどを目的として行います。
関節内出血によって一時的に関節の機能低下が起こっても、多くの場合は軽度であるため、そのまま放置されがちです。放置しても、他の部分の関節や筋肉が代わりにはたらいてくれるため、特に問題なく生活は送れます。
しかし、出血と放置を繰り返していると、徐々に軽度の機能障害が積み重なって、大きな機能障害を引き起こすことになります。そうなってからの回復は難しくなってしまうため、出血が起きたら放置せずに、軽度でも理学療法を行って、関節機能の回復を行うことが大切です。軽度の状態であれば、比較的簡単に機能を回復することも可能です。
理学療法はすぐに結果が出る治療ではありませんが、日頃から自分の関節機能に注意して、理学療法士とともに継続的に行うことが重要になります。