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【監修】医療法人財団 荻窪病院 血液凝固科 鈴木 隆史 先生
インヒビターができてしまうのは、免疫というしくみが凝固因子製剤をもともと自分の体にない「異物」として認識してしまうことが原因でした。
しかし、インヒビターをなくす治療法があります。それは「免疫寛容導入(ITI)療法」と呼ばれ、免疫に凝固因子製剤を「異物」ではない、もともと自分の体の中にあるものだ、と思わせる治療法です。簡単にいえば「体に凝固因子製剤を慣れさせる、体にその因子を、もともとあるものだと覚えこませる治療法」です。
ITI療法について調べた国際研究では、ITI 療法を成功させる方法には3つのポイントがあることが分かってきました。そのポイントとは、「①ITI 療法前のインヒビター力価の最高値が低いこと」、「②ITI 療法開始直前のインヒビター力価が低いこと」、そして「③インヒビターが検出されてからITI 療法を始めるまでの期間が短いこと」です。
そのためインヒビターが検出されたら、ITI 療法を開始するまではなるべくインヒビター力価を増加させない製剤を使うことが大切になります。なぜならインヒビター力価を増加させてしまうと、ITI 療法前のインヒビターの最高値が高くなってしまいますし、ITI療法開始直前までにインヒビター力価を下げるのに時間がかかってしまうからです。
しかし近年、インヒビターが検出された後には力価にかかわらず速やかにITI療法を開始することで成功率に違いがなかったという報告がされました1)。今後、国内外のインヒビター治療のガイドラインにも影響を与えるかもしれません。
ITI療法の成功率は、血友病Aで60〜80%といわれています2)。血友病BはITI療法を行うとアレルギー症やネフローゼ症候群といった副作用が起きる問題があるので、成功率は低めになっています。成功までの期間は人によって異なり、比較的短い期間でインヒビターをなくすことができる人もいる一方、長期間継続してもインヒビターが少なくならない人もいます。
しかし、ITI療法でインヒビターをなくすことができれば、通常の補充療法で止血管理ができ、治療が簡単になります。成人になって初めてインヒビターができてしまうことはまれですが、製剤の止血効果が落ちてきたと感じたら、低い確率ではありますがインヒビターができている可能性もありますので、すぐに医師に相談することが重要です。
現在、インヒビターがあっても止血が可能な製剤など、新たな薬剤の開発が進んでいます。近い将来、インヒビターの心配をほとんどしなくて済む日が来るかもしれません。
インヒビターとは
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