治療について
凝固因子だけではない血友病Aと血友病Bの違い
血友病Aと血友病Bには、さまざまな違いがあります
血友病Aと血友病Bは同じ血友病であり、臨床症状は似ています。血友 病Bの罹患率は血友病Aの約1/6であり、血友病Bのほうが稀です。
血友病A1) | |
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罹患率 | 男性約5,000人に1人 |
好発する症状 | 関節内出血、筋肉内血腫 |
出血頻度a | 重症例で12-30回/年 |
a:患者間のばらつきが大きい
血友病B1) | |
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罹患率 | 男性約30,000人に1人 |
好発する症状 | 関節内出血、筋肉内血腫 |
出血頻度a | 重症例で12-30回/年 |
a:患者間のばらつきが大きい
b:患者間のばらつきが大きい;血友病Bでは
より軽度の出血を呈する表現型の報告がある
血友病Aは血液凝固第VIII因子、血友病Bは血液凝固第Ⅸ因子の欠乏や質的異常が原因です。第VIII因子と第IX因子は、その機能や消失半減期などに違いがあり、第Ⅸ因子は第VIII因子と比べて、比較的小さい分子であることが報告されています。
第VIII因子について1-3) | |
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機能 | 補因子 |
分子量 | 280kDa、VWF(500-2000kDa)と結合 |
正常血漿中濃度 | 0.1-0.25μg/mL |
生体内回収率 | 1.5-2(U/dL)/(U/kg) |
消失半減期 | 12時間 |
第IX因子について1-3) | |
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機能 | 酵素 |
分子量 | 55kDa |
正常血漿中濃度 | 3-5μg/mL |
生体内回収率 | 0.8-1(U/dL)/(U/kg) |
消失半減期 | 18時間 |
血液凝固第IX因子は、血液凝固第VIII因子と比べて血管外に存在しやす い分子です。
血漿中の第VIII因子(模式図)
第VIII因子の大部分はVWFと結合して血液中を循環しているため、第VIII因子は血管外にほとんど出ることはなく、血管内に多く存在しています4-6)。
血漿中の第IX因子(模式図)
第IX因子の50~80%は血管外に分布し、主にIV型コラーゲンに結合しています7)。そのことが、第IX因子の消失半減期の延長に寄与している可能性があります4,8,9)。
2)Castaman G, et al.: Haematologica. 2019; 104: 1702-1709.
3)Nazeef M, et al.: J Blood Med. 2016; 7: 27-38.
4)Iorio A, et al.: Thromb Haemost. 2017; 117: 1023-1030.
5)Lenting PJ, et al.: J Thromb Haemost. 2007; 5: 1353-1360.
6)Morfini M: J Clin Med. 2017; 6: 35.
7)Feng D, et al.: J Thromb Haemost. 2013; 11: 2176-2178.
8)Bjökman S: Haemophilia. 2013; 19: 882-886.
9)Gui T, et al.: Blood. 2002; 100: 153-158.
血友病Bの治療
血管外にも多く存在する第Ⅸ因子の場合、血漿中の活性測定におけるトラフ値*1が出血率と相関するとは限りません10)。
血友病Aにおける定期補充療法では、トラフ値を高く維持することが最適であるといわれています。
一方で、血友病Bに関しては、トラフ値と臨床的な効果は必ずしも相関するわけではありません10)。
血友病Bを評価する際は、血漿中の凝固因子活性だけではなく、
出血率、定期補充療法のアドヒアランスやQOL*2などを考慮し
包括的な治療を行うことが重要です11)12)。
*2 Quality of life:生活の質 10)Dolan G, et al.: Blood Rev. 2018; 32: 52-60.
11)Srivastava A, et al.: Haemophilia. 2013; 19: e1-e47.
12)McLaughlin JM, et al.: Haemophilia. 2014; 20: 506-512.