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Aさんの体験談

Aさんの体験談

重症血友病の長男と次男を持つ私は確定保因者※1、そして、末っ子の娘は推定保因者※2です。

家族歴のない我が家は、私の第一子である長男が生まれたことで、私はもちろん、両親や妹たちも血友病や保因者というものに出会いました。

「なんですか?それ?」という病名を伝えられ、驚いて、悩んで、考えた1週間。“普通に育てよう!”と結論を出した私と、両親では、その捉え方は大きく異なりました。特に私が保因者である可能性を知った母親からは、2人目は作らないように言われましたが、私は長男に弟妹を作る選択をしました。

そして、次男の妊娠が分かったとき、それは妹が男の子を出産した直後でした。健康に生まれた甥と妹の退院を和やかに祝われているのとは対照的に、私に対してはため息が返ってきました。何とも言えない気持ちを飲みこんだのを覚えています。

頭蓋内出血のリスクを考慮し、長男の主治医や産科の先生に相談をしましたが、普通に産めるからと帝王切開はさせてもらえませんでした。しかし結果的に、次男は出産時に頭蓋内出血を起こしてしまったのです。出産時の感覚や、生まれて来たときの泣き声が長男のときと何か違うということに気付き、直感的に頭蓋内出血だと思った私は、早く診察と診断をして、適切な処置をしてほしいと看護師さんに掛け合いましたが、夜中に生まれた我が子は朝まで待たされて、処置までに時間がかかってしまいました。ようやく医師が来て、「頭蓋内出血を起こしている、この子も血友病だろう。今から製剤投与に入る。」と告げられた直後、母に泣かれてしまったことで、私と母との間には壁ができてしまいました。私自身が立てた壁なのかもしれません。自分たちの存在を否定されたような気持ちになったのです。

3人目を妊娠したときは、女の子と分かるまで、親は口もきいてくれませんでした。女の子なので、少し気楽に分娩に臨めましたが、「親には一切頼らない。」と決めて産みました。上の子たちにターゲットジョイントやインヒビターができていて、病院三昧の日々、1人で抱え込む子育ては体力的にめげそうな日もありましたが、末っ子の女の子に対して男の子とは違う子育てを楽しんでいました。

しかし、育てるにつれ、またちょっと違う悩みを持つようになりました。自分の経験を娘に生かしていけばいいし、冷静に保因者についての教育をすればいい。認めてくれる人とご縁があれば結婚もすればいいし、子どもだって産めばいい。今は保因者でも安心して出産できる環境が整ってきているし、私自身が全力でサポートしてあげようとも思っています。けれどもその一方、どこかで、娘が自分と同じ思いをするのではないかという不安があるのです。

娘には息子たちに血友病を教えてきたことと同様に、小さいころから保因者の可能性について話をしてきたのですが、月経や性教育の授業を受けてきた小学5年生のときに「保因者だったらどう?」と質問してみました。娘からは、「別にいいんじゃない?」と返ってきました。本人は結婚もしたいし、子どもも産みたいと思っているようです。血友病の子どもが生まれても、「別に注射をすれば普通に生活できるでしょ?お兄ちゃんのときよりもっと製剤が良くなるんだから」くらいの感覚みたいです。

長男が血友病と診断されて、「普通に育てよう」と決めてから、「あの子達が普通にするのに足りないものを足してあげればいい」というスタンスで生きてきました。血友病であっても、ほかの障害であっても、それはそれで共存する楽しい生活をしようと思って、子育てをしてきました。その中で、血友病だったからこそ出会えた方達がいて、できた経験があって、子どもたちも学校の友達、塾の友達、クラブの友達とは違う友達がいて、貴重な経験をしている。「だから、ラッキー?」みたいな感覚があって。そのあたり、うちの家族はみんなポジティブなのかもしれませんね。

けれど、やっぱりそれは患者会の皆さんや主治医がいて、薬があって…私が普通に子育てするために足りないものを足してもらってきたおかげだと思っていて、私もポジティブな子どもたちの思いがネガティブにならないように、支えていけたらな…と思っています。

※1 確定保因者は、①父親が患者である女性、②2人以上の患者(児)の母親、③1人の患者の母親でさらに母方血縁に患者がいる女性です。
※2 推定保因者は、①1人の患者(児)の母親、②母方血縁に患者がいる女性、③兄弟が患者の女性です。

保因者の問題でお悩みやご相談がある方は、下記サイトもご覧ください。

一般社団法人ヘモフィリア友の会全国ネットワーク・サイト ヘモフィリアねっと

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