血友病とは
図解、血液の役割と止血のしくみ
【監修】医療法人財団 荻窪病院 血液凝固科
鈴木 隆史 先生
血液の役割1)
血液は、人間をはじめ動物の体の中を循環する液体で、酸素や栄養を体の中で運搬し、体温を一定に保ったり、病原体などから体を守ったりするなど、人間が生きていくためにとても大切なはたらきをしています。一般の大人では、血液の量は体重の約8%を占めるとされています。これは、体重60kgの大人で4〜5Lもの量になります。
血液は一見すべてが液体のように見えますが、実は細胞からなる成分(血球)と液体からなる成分(血漿)が混ざっています。
血球は血液の約45%を占め、赤血球や白血球、血小板が含まれます。赤血球は酸素を体の中で運搬し、白血球は体内に侵入した病原体や異物から体を守ります。血小板は血管が傷ついたときに集まって、血管の傷口をふさぎ止血するはたらきを持ちます。
血漿は血液の残り約55%を占め、そのほとんど(約91%)は水ですが、血漿の水以外の成分には、止血に重要なはたらきを持つ「血液凝固因子」や止血に関わる他の成分も含まれています。
血液細胞の種類2)
赤血球
中央にくぼみがある円盤型の赤い血球。血中をめぐって全身に酸素を運びます。
血小板
出血した際に、傷付いた部分に付着したり、血を固まるための物質を放出したりして、血を止めるはたらきをします。
白血球
免疫を担当する血球成分で、体内に侵入した異物(細菌、ウイルスなど)を排除するはたらきを持ちます。以下の5種類の白血球が、それぞれの作用を発揮します。
- リンパ球
- 異物に対する抗体を作って攻撃します。
- 好中球
- 侵入した異物を貪食(どんしょく:食べること)して死滅させます。
- 好酸球
- 寄生虫を攻撃する白血球です。
- 好塩基球
- 細胞内にある物質を放出し、体内にアレルギー反応を起こします。
- 単球
- 好中球同様、異物を貪食して処理します。
止血のしくみとは
血管が傷付いて出血しても、人間の体は止血するしくみを持っています。そのしくみは、血管が修復されるところまでも考えると、大きく4つのステップに分けることができます。
出血から止血の4ステップ
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まず血管が傷付くと、傷付いた血管の壁からコラーゲンが露出されます(①)。
3)より改変
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すると血小板は、フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand 因子:VWF)と一緒になってコラーゲンと結合します。他の作用も相まって血小板は傷口に集まり、初めての血栓(一次血栓)が作られます。これを一次止血と呼びます(②)。
血友病と似たような疾患としてフォン・ヴィレブランド病のことを聞いたことがあるかもしれません。この疾患では、VWFがもともと体の中で不足しているので血小板がコラーゲンと結合できず、一次血栓が作られないため血が止まりにくくなります。
3)より改変
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一次止血の次は、血友病になじみのある血液凝固因子の出番になります。血管が傷付いたことが刺激となり、凝固因子の見事なリレーが始まり、フィブリンが作られます。フィブリンは一次血栓のまわりを覆い、血栓をもっと硬くて強い血栓(二次血栓)にします。これを二次止血と呼びます(③)。
3)より改変
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血管が修復される(④)と、今度は邪魔になった血栓を溶かす作業が始まります(線溶現象)。この4ステップを踏むことで、止血は完了し、血管は修復されます。
3)より改変