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血友病の治療―定期補充療法 【監修】医療法人財団 荻窪病院 血液凝固科 部長鈴木 隆史 先生
定期補充療法を極める
定期補充療法の目的は、関節症の予防
以前は出血時補充療法が中心でしたが、この治療法だと特に重症の人の多くが、何度も関節の中の出血(関節内出血)を繰り返してしまい、関節が壊れてうまく動かなくなってしまう血友病性関節症を発症してしまうことが問題となっていました。そのため、重症の人たちの出血、特に関節内出血を防ぐための治療法として、定期的に凝固因子を補充する治療法が生み出され、それが定期補充療法と名付けられました。
定期補充療法は3種類ある
定期補充療法はどのタイミングで開始したかで、一次定期補充療法、二次定期補充療法、三次定期補充療法の3種類に分類されます。一次定期補充療法は、ひざなどの大きな関節に出血した回数が2回未満(つまり関節がまだきれいな状態)で3歳までに(つまり若いうちに)定期補充を開始したものをいいます。二次定期補充療法は、大きな関節に出血した回数が2回以上あるけれども関節障害がまだ起きていないときに開始したものをいいます。三次定期補充療法は、すでに関節障害が起きてしまっているけれども、それ以上ひどくならないように開始したものをいいます。
定期補充療法の研究は年々進んでいる
定期補充療法の効果が最初に報告されたのは1942年のことです。その後、世界各地で定期補充療法の効果を確かめる研究が数多く行われ、2007年に一次定期補充療法が関節内出血をしっかり予防することが確かめられたという報告がなされ話題となりました。二次・三次定期補充療法についても、関節内出血を減らし、入院や欠席・欠勤日数の減少や身体機能の向上などの効果を示すことがわかってきています1)。
「個別化」された定期補充療法が大事
定期補充療法の目的は、関節障害を予防すること。つまり定期的に凝固因子を補充して凝固因子活性がある程度高い状態を保ち出血を防ぐことにあります。そのため輸注は年齢や生活などにもよりますが一般的に、血友病Aであれば「週に1〜3回」または「2〜5日に1回」、血友病B であれば「週に1〜2 回」または「3〜14日に1回」行います2, 3)。補充する凝固因子製剤は、工夫され半減期が長くなっているものもあり、使用する製剤によって輸注の頻度が異なります。
人によって生活のパターンや、生活の中でどのくらい動くか、出血がどのくらいの頻度であるか、関節障害がどの程度あるかは異なりますので、その人その人にあった凝固因子製剤と輸注の頻度・量を選ぶこと(これを「個別化定期補充療法」と呼びます)が大切だと現在では言われています。
定期補充療法だけでは不十分な場合も
また、現在では個別化定期補充療法の他に、その時その時の活動の程度や時間に合わせた凝固因子活性を血中に維持することが大切だと言われています。というのも、定期補充療法を行っていても、輸注をする直前は凝固因子活性が低くなり出血しやすくなっている可能性があるからです。そのため、激しいスポーツなどを行うときには必要に応じて直前に予備的補充療法を、出血したときには出血時補充療法を行う必要があります。

(参考)定期補充療法をしている人の割合
年次推移(血友病A)

年次推移(血友病B)

年齢層別(血友病A)

年齢層別(血友病B)

公益財団法人エイズ予防財団: 血液凝固異常症調査 平成19〜27年度報告書.
総務省統計局: 平成27年人口動態調査. より作成
- 1) 白幡聡, 福武勝幸 編: みんなに役立つ血友病の基礎と臨床 改定3版. 医薬ジャーナル社, 2016.
- 2) 日本血栓止血学会: インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン 2013年改訂版.
- 3) 各製剤添付文書(2017年1月現在)
MAT-JP-2104126-1.0-04/2021