血友病とは

保因者が困っていること

【監修】独立行政法人国立病院機構
大阪医療センター 血友病科 GM/感染症内科
医長 西田 恭治 先生

保因者が困っていること

保因者にも、出血が止まりづらい人がいる

これまで、血友病は主に男性の病気だと考えられてきました。しかし、女性である保因者でも、出血が止まりにくいという症状が高い頻度で起こっていることが知られるようになってきました。

保因者の凝固因子活性は、理論的には50%程度であると考えられます。これは、保因者が変異のないX染色体、変異のあるX染色体を1つずつ持っているためです。女性はX染色体を2つ持っていますが、X染色体は体の中で無作為にいずれかがはたらいており、 ほぼ半数ずつはたらいていると仮定すると、凝固因子活性も半分程度になると考えられます。実際、保因者の約3分の1は、凝固因子活性が保因者でない人の60%未満であるという報告もあります1)

しかし、2つのX染色体が均等にはたらかないことも多いため、実際には、凝固因子活性が10%以下(つまり、軽症血友病患者さんの中でもかなり低い凝固因子レベル)である保因者も珍しくありません2)

にもかかわらず、残念ながら多くの医療者が、保因者に出血しやすい人がいることを認識していません。医療者の意識を高めるため、「保因者」ではなく「軽症女性血友病」という呼び方にすべきである、との議論もあるほどです。

症状は気付きにくいが、実は生活の質(QOL)を下げていることも

保因者の約半数で月経過多(月経時の出血量が多い)などの症状が認められていますが2)、それが健康女性にも起こる症状であるため、保因者であることが原因であることに気付かない場合も少なくありません。

しかし実際には、こうした出血に伴い、慢性的な鉄欠乏性貧血を起こし、集中力が低下したり、疲れやすくなったりするなど、生活の質(QOL)が低下していることも多いのです。

また、血友病患者さんのように、関節内の出血が起こっている人もいます。

保因者の出血の種類と頻度3-6)

出血の種類 頻度
月経過多 23〜50%
産後出血 22〜43%
青あざ 19〜67%
術後出血 28〜69%
鼻出血 8〜43%
抜歯後出血 21〜77%
関節内出血 8%
保因者の出血の種類と頻度
1)世界血友病連盟(WFH):血友病保因者と女性血友病, 2012
2)白幡聡, 福武勝幸編:みんなに役立つ血友病の基礎と臨床(改訂3版), 医薬ジャーナル社, 2016
3)Sharathkumar A, et al.:Haemophilia 2009;15(1):91-100.
4)Miesbach W, et al.:Haemophilia 2011;17(1):246-251.
5)Plug I, et al.:Blood 2006;108(1):52-56.
6)Mauser Bunschoten EP, et al.:Thromb Haemost 1988;59(3):349-352.

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