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注射と併せて使用する薬 【監修】広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 小児科学 教授小林 正夫 先生
血友病の治療では、凝固因子製剤の注射と併せて、出血や痛みを止める薬が使われる場合があります。薬の成分の中には、血友病の人が避けなければいけないものがあるので、患者さんが市販薬を服用するときは医師や薬剤師に相談し、説明を聞いてから服用するようにしましょう。

出血を止める薬
出血があったとき、基本となる治療は凝固因子の補充療法ですが、止血を助けるために他の薬を使用することもあります。
- 軽症~中等症の血友病Aの患者さんに出血がある場合は、デスモプレシン(DDAVP)という薬を点滴で投与することがあります。重症の血友病Aや血友病Bの患者さんには効果がありません1)。
- 口の中、鼻、消化管など、血が止まりにくい粘膜からの出血のとき、止血効果をより確実にし、再出血を防ぐためにトラネキサム酸などの「抗線溶剤※」と呼ばれる薬が使用されることがあります1)。内服薬の他に、歯科の治療ではうがい薬で処方されることもあります。
「線溶」とは、血を止めるために作った血の塊を傷が修復した後、溶かして流す身体のしくみのことで、「抗線溶剤」はその働きを弱める薬です。ただし、血尿など、腎臓や尿管などの尿路系の出血がみられる患者さんでは、血の塊が閉塞を起こす可能性があるので、トラネキサム酸を使用することはできません。

痛みを和らげる薬
関節や筋肉の出血時の痛みや、その後も続く痛みを和らげるために、鎮痛薬(内服薬や湿布薬など)を使用します。しかし、鎮痛薬には血が止まりにくくなる副作用などをもつものが多く、血友病の人が使用する場合は、慎重に薬を選ばなくてはなりません。
血友病の人が使用するときに注意しなくてはならないのは、非ステロイド性抗炎症薬( NSAIDs)と呼ばれる種類の薬です。解熱・鎮痛薬(熱を下げるときや痛みを和らげるときの薬)、消炎鎮痛薬(炎症と痛みを鎮める薬)の多くがこれに当たります。血小板の働きを低下させる副作用があるため、血友病の人が使用すると出血しやすくなったり、出血が悪化したりします。病院では、非ステロイド性抗炎症薬ではないアセトアミノフェンが主成分である薬や、非ステロイド性抗炎症薬の中でも安全性の高いものが処方されます 2)。
市販薬を購入するときに注意してほしいこと
市販薬の中には、非ステロイド性抗炎症薬の成分が配合されたものがたくさんあるので、血友病の人は注意が必要です。風邪薬など血友病と関係のない薬でも、できるだけ主治医に処方してもらうようにしましょう。
もし市販薬を使う場合は、説明書や箱にある成分表示をみて、アセトアミノフェンが主成分となっている風邪薬や解熱・鎮痛薬を選ぶようにしてください。しかし、市販薬は主成分の他にもさまざまな成分が配合されていますので、心配なときは主治医や薬剤師に相談してから服用しましょう。
また、通常の外用薬(サリチル酸メチルなどを主成分とした貼り薬;サロンパスなど)は、出血部位に積極的に使用されます。痛みが強い場合には、非ステロイド性抗炎症薬(ピロキシカムやジクロフェナク、インドメタシンなど)が配合されている軟膏やクリーム、テープ、パップ剤などを短期間、限定して使用しても問題はないといわれています1,2)。

服用してはいけない成分
非ステロイド性抗炎症薬の中でも、アスピリンを含むものは血小板の働きを阻害する力が強いので、特に使用を避けなければいけません。市販薬では次のようなものに含まれている可能性がありますので、説明書や箱に記載された成分をよくチェックしましょう。
- 風邪薬
- 解熱・鎮痛剤(頭痛・歯痛・生理痛の薬、「熱さまし」といわれる薬)
- 参考資料
- 1)石黒精ほか(編):血友病診療実践マニュアル;診断と治療社
- 2)白幡聡ほか(編):みんなに役立つ血友病の基礎と臨床;医薬ジャーナル社
MAT-JP-2104126-1.0-04/2021