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血友病患者さんの充実した人生のために。
「ヘモフィリアToday」では、患者さんとご家族の方々、そして患者さんをサポートされる方々のお役に立つ、血友病関連情報をお届けしてまいります。

お役立ち情報

血友病Q&A

【監修】医療法人財団荻窪病院 血液凝固科
長尾 梓 先生

はじめにarrow

血友病患児の受け入れは、経験のない現場では特に不安が大きいことと思います。
しかし、血友病はいくつかの留意点をふまえておけば、他の子どもたちと同じように過ごしても問題のない病気です。
学校(集団)生活という貴重な学びと成長の場を、健康な子どもたちと同じように血友病患児がのびのびと経験できるよう、先生方のご理解とご協力をお願いいたします。

はじめに

1.血友病とは?arrow

止血に必要な「凝固因子」が不足しているために「出血したら血が止まりにくい」病気です。

止血のしくみと血友病

血液は、固まることなく血管の中を流れて全身を巡っています。
何らかの原因で血管が破れて出血すると、血を固めて傷口をふさぎ、出血を防ごうとする機能が働きます。
このときに重要な役割を果たすものがいくつかありますが、そのうちの1つが「凝固因子」と呼ばれるタンパク質です。
凝固因子は十数種類あり、それぞれが作用しあい、連携して血を固めています。
その凝固因子が1つでも欠けると、血は固まりにくくなります。
血友病は、この凝固因子のうち第Ⅷ(8)因子あるいは第Ⅸ(9)因子が欠けている、または量が少なくて正しく働かないために、 出血が止まらなかったり、出血が止まるまでに時間がかかったりする病気です。
不足している凝固因子の種類によって「血友病A」と「血友病B」があります。
国内には現在約6,200人の血友病患者さんがいます1)

血友病の種類

血友病の種類

1)平成28年度血液凝固異常症全国調査報告書

止血のしくみ

①出血→血管収縮

血管に傷ができると、まず血管の壁が収縮することによって傷口が小さくなり、出血量を最小限に防ぎます。

出血→血管収縮

②一次血栓

次に「血小板」という血液の細胞成分が傷口に集まり、固まってふた(血小板血栓)を作ります。

血小板

③二次血栓

血小板のふただけでは強度が足りないので、凝固因子のチームが連携して「フィブリン」という強固なふたを作って隙間を完全に止血します。

二次血栓
ノート

2.血友病の症状は?arrow

多くみられるのは関節内や筋肉内での内出血です。

血友病の症状

血友病患者さんでは、健康な人なら自然に止まるような出血でもなかなか止まりません。
多くみられるのは内出血(関節内・筋肉内出血)です。
出血が長く続いたり、何度も繰り返し起こることによって、痛みや腫れなどが生じます。
また、慢性的な症状としては、関節内の出血を繰り返すことで、関節が変形したり、痛みを生じます(血友病性関節症)。
最近では、こうした症状が起こらないように、ほとんどの子どもが定期的に予防のための注射(定期補充療法)をしています。
それでも、走ったり跳んだり、転んだりしたあとに、普段と違う動きをしたり、関節や筋肉が腫れたり、痛みを訴えたりする場合は内出血を起こしている可能性があるので、応急処置(RICE)や出血を止めるための注射(出血時補充療法)が必要になる場合があります。
部位ごとの処置は(出血の部位ごとの処置は?)を参考にし、判断に迷う場合は保護者または主治医に連絡をしてください。

血友病の重症度

血友病の重症度は、「凝固因子活性」、つまり凝固因子の働きの度合いを目安に判定されています。
健康な人の凝固因子の働き(活性)を100とし、%(パーセント)で表したものが凝固因子活性となります。
下表のように、凝固因子活性の程度に応じて軽症、中等症、重症に分類されます。
ただし、実際の出血頻度や関節症の重症度は、患者さんの活動状況や、行っている治療によって変わってきます。

凝固因子活性と血友病の重症度分類

凝固因子活性と血友病の重症度分類

3.血友病の治療は?arrow

不足している凝固因子を、「凝固因子製剤」の注射によって補う、「補充療法」を行います。

凝固因子製剤の補充療法

血友病患者さんは、出血したときに止血するために必要な凝固因子が足りないため、「凝固因子製剤」の注射によって凝固因子を体に取り入れる治療(補充療法)を行っています。
補充療法は主に、下に示す3つの方法に分けることができます。
どのような補充療法を行うかは、患者さんの出血症状や身体活動の状況に合わせて考えられています。
なお、凝固因子製剤はウイルス除去・不活化の技術が開発されたり、ヒトの血液を原料としない遺伝子組換え技術を使った製剤が開発され、安全性も高まっています。
そのため、現在では、適切な補充療法により、血友病患者さんも健康な人と変わらない生活を送ることができるようになっています。

凝固因子製剤の補充療法

3つの補充療法

①出血時補充療法

出血したときに、止血するために凝固因子製剤を輸注し、止血に必要なレベルまで凝固因子活性を高める治療です。
出血がみられたら、できるだけ早くこの治療を行う必要があります。
凝固因子製剤の量や回数は、出血の場所や程度によって調節します。

②予備的補充療法

スポーツや旅行などのイベントの前に、あらかじめ凝固因子製剤を輸注して凝固因子活性を高めておき、出血を予防する治療です。

③定期補充療法

長期間にわたって定期的に注射をすることで、凝固因子活性を一定レベルに維持し、患者さんの出血頻度を減らします。
血友病性関節症の進行を抑制することが期待できる治療法で、現在、主流になっています。
ただし、定期補充療法を行っていても、輸注をする直前は凝固因子活性が低くなり出血しやすくなっている可能性があります。
そのため、激しいスポーツなどを行うときには必要に応じて直前に予備的補充療法を、出血したときには出血時補充療法を行うなど、追加の注射が必要となる場合があります。

注射と凝固因子活性の推移のイメージ

注射と凝固因子活性の推移のイメージ

4.学校・園での事前の準備は?arrow

保護者、主治医の連絡先を確認し、相談して、情報と理解を共有してください。

校長・園長先生、担任の先生、養護の先生だけでなく、できるだけ多くの先生方の間で情報と理解の共有をお願いします。

患児の保護者と連絡が密にとれるよう、確実に連絡のとれる連絡先を教えてもらってください。

主治医の連絡先や病院の場所も、確認しておきましょう。
必要であれば、主治医に電話や面談で病気についての説明を受け、心配な点や不明点などを質問・相談してください。

かかりつけの病院が遠い場合、主治医や保護者と相談して、緊急時に連れて行く近くの病院を見つけておきましょう。

患児が保育園や幼稚園、小・中学校に通うために何らかの支援が必要な場合、自治体によっては必要な支援(支援員や介助員の配置等)の提供が認められる場合もあるので、事前に確認してください。

保護者、主治医の連絡先を確認し、相談して、情報と理解を共有してください。

5.学校・園での生活は?arrow

他の子どもたちと同じようにできますが、保護者と相談してください。

学校・園での生活

上履きをクッション性の良いものに変えるなど、多少の工夫で出血を防ぐことが可能です。

他の子どもたちへは、病名や病気の内容を詳しく知らせずに、「血が止まりにくい体質」「関節が弱い」などの説明で十分な場合があります1)

小学校高学年くらいになると、自分で注射ができる子がいます。薬を学校で保管していただけると助かります。また保健室など、学校で安心して注射ができる場所を確保してあげてください。

体育や部活動は、原則としてすべて可能ですが、柔道や剣道、空手など格闘技に近いスポーツは保護者とよく相談してください。「受け身だけなら可」など、その子どもによってはできることがあります。また、関節や筋肉に出血があるときは安静が必要です。その場合、体育の授業のときは、何らかの役割を与えて参加できるよう配慮をお願いします1)

中学・高校などの部活動で運動が激しくなり、出血が増えるような場合は、医師より運動を控えるよう指示が出る場合があります。

保健室などで市販薬を使う際の注意点

解熱・鎮痛薬(熱を下げるときや痛みを和らげるときの薬)、消炎鎮痛薬(炎症と痛みを鎮める薬)の中には血小板の働きを低下させる副作用があり、血友病患者さんが服用すると出血しやすくなったり、出血が悪化したりするものがあります。

内服薬について

風邪薬や解熱・鎮痛薬は、「アセトアミノフェン」が主成分となっているものを選ぶようにしてください。

非ステロイド性抗炎症薬の中でも、「アスピリン」と「インドメタシン」を含むものは血小板の働きを阻害する力が強いので、特に使用を避けてください。

服用させるときは、事前に主治医や保護者と相談するとよいでしょう。

外用薬について

通常の外用薬(サリチル酸メチルなどを主成分とした貼り薬;サロンパスなど)は、出血部位に積極的に使用されます。

痛みが強い場合には、非ステロイド性抗炎症薬(ピロキシカムやジクロフェナク、インドメタシンなど)が配合されている軟膏やクリーム、テープ、パップ剤などを短期間、限定して使用しても問題はないといわれています1,2)

外用薬について

1)石黒精ほか(編):血友病診療実践マニュアル;診断と治療社
2)白幡聡ほか(編):みんなに役立つ血友病の
基礎と臨床;医薬ジャーナル社

6.出血したときの応急処置は?arrow

RICE(ライス)と略される4つのケアがあります。

血友病患児が出血したときの補助的処置として「RICE(ライス)」と略される4つのケアがあります。
軽度の出血のときはこれだけで止血できることも多く、また緊急時、病院へ運ぶまでの応急処置としても有効です。

Rest(安静)

出血した場所を動かさないようにします。
動いているよりもじっと安静にしているほうが、止血しやすくなります。

(安静)

Ice(冷却)

出血した場所を冷やします。
冷やすと血管が収縮するので、より止血しやすくなります。また、痛みを和らげる効果も期待できます。内出血した場所に、氷嚢をタオルに包んだものなどを当てます。長時間冷やし続けると、皮膚が凍傷を起こしたり、ダメージを受けてしまうので注意します。

(冷却)

Compression(圧迫)

出血した場所を清潔なガーゼなどで押さえます。
切り傷や擦り傷の場合は、清潔なガーゼなどを当てて出血部位を押さえます。関節や筋肉などの内出血の場合は、包帯をきつく巻いて圧迫します。鼻出血の場合は指で小鼻をつまみます。

(圧迫)

Elevation(高くする)

出血した場所を心臓の位置よりも高く挙げます。
例えば、膝や足などで出血が起こった場合は、仰向けになって足を丸めたマットの上など高いところに置きます。その姿勢をとると痛みが強くなる場合は無理をしないようにします。

(高くする)

7.出血の部位ごとの処置は?arrow

注射が必要と考えられる場合や、大きなけがの場合は、保護者に連絡してください。

出血の部位ごとの処置は下記の通りです。まだ話すことが上手にできない乳幼児に関しては、様子を注意深く観察することが必要になります。
なお、出血部位への外用薬や、鎮痛薬などの内服薬の注意点については(保健室などで市販薬を使う際の注意点)をご参照ください。

切り傷・擦り傷

小さな傷なら、消毒したあと圧迫したり冷やしたり(少し長めに)して、血が止まるようなら大丈夫です。大きなけがの場合は、血友病ではない他の子どもと同じです。病院へ連れて行くなどの対応をしてください。

あざ・こぶ

小さなものなら、圧迫や冷却で。だんだん腫れてくるようなら、自分で注射できる子には注射をするよう促し、自分でできない幼児の場合は保護者に相談しましょう。

鼻血

軽いものなら小鼻をつまんで圧迫し、ワセリンや軟膏を塗った綿をしばらくの間つめて、出血が止まれば大丈夫です(ワセリンなどを塗らないと、綿が鼻粘膜にくっつき、取るときに出血を繰り返す恐れがあります)。小鼻を圧迫しても口の中に出血が続くときは、保護者に相談してください。鼻血を繰り返す子どもの場合は、トラネキサム酸(内服薬)を服用するとよいので、処方してもらったものを学校(園)に保管しておきましょう。

関節内出血・筋肉内出血

注射が必要なので、自分で注射できる子には注射をするよう促し、自分でできない幼児の場合は保護者に連絡してください。出血は目に見えないのでわかりにくいですが、次のような様子がうかがえたら注意が必要です。

走っていた子が急に歩くだけになる、歩き方がおかしくなる、動かなくなる、立たなくなって座って遊ぶようになる、歩かないでハイハイを始める、片手しか使わなくなるなど、普段と違う動きをするようになる

痛みを訴える

関節や筋肉が腫れたり、膨らんだりしている、熱をもっている

その部分を触ったり、曲げたり伸ばしたりすると痛がる

頭を打ったとき

高い所から落ちたり、何かに強くぶつかったりして頭を強く打った場合は、すぐに保護者に連絡してください。意識がなくなったり、けいれんを起こしたりする場合に救急搬送が必要なのは、他の子どもと同じです。搬送の際には血友病であることを必ず伝えてください。緊急時の対応については、日頃から保護者や主治医と相談しておいてください。

おわりにarrow

−保護者の方とのコミュニケーション−

慣れないうちは、保護者との密な連絡が必要かつ重要になります。
ケースごとに対処のしかたを相談するうち、だんだんとコツがわかってきて、自然に対応することができるようになりますので、保護者や主治医となんでも話し合える信頼関係を築いてください。
さらに緊急時の対応について、保護者や医療関係者と救急訓練を行っておくと安心です。
保護者の中には、入学(入園)後に病気のことを伝える方もいるかもしれません。
血友病患児の保護者の方は、入学(入園)にあたってさまざまな悩み、葛藤を抱えておられ、「普通に接してもらいたい」という思いからそのような方法を取ることもあるかと思います。
そうした思いをご理解いただければ幸いです。

保護者の方とのコミュニケーション

GZJP.HEM.19.04.0271
2019年5月作成

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