用語集
か行
確定保因者1)
血友病保因者は、「2本のX染色体のうち1本に病因遺伝子変異をもつ女性」と定義されます。保因者の診断として、家族歴、血液検査、遺伝子解析が行われており、家族歴で確定保因者と推定保因者を判断することができます。
家族歴が次の①~③の場合、保因者であることが確実な確定保因者となります。
①血友病の父親を持つ女性
②2人以上の血友病患児を出産した女性
③1人の血友病患児を出産し、かつ母方家系に確実な血友病患者のいる女性
関節内出血1)
血友病患者さんにみられる関節内出血は、ひじ、ひざ、足などの大きな関節に多くあらわれます。歩行を開始することで関節の動きが活発化する1歳以降にみられます。関節に熱っぽさと痛みを伴う腫れが生じ、出血を繰り返して症状が進行すると、血友病性関節症に至ります。
凝固(血液凝固)
血管が傷ついた時に、流出を防ぐために血液が固まることを凝固(血液凝固)といいます1)。一次止血が起こったのち、さまざまな血液凝固因子が連鎖的に反応して(血液凝固カスケード)、血液中のフィブリノゲンがフィブリンという線維状のタンパク質に変換されて、一次止血でできた血栓を包むように固まることで凝固します1,2)。
血友病患者さんでは、この血液凝固カスケードの中の特定の因子がうまく働かないため、血液が凝固せず、出血傾向がみられます3)。
2)白幡 聡, 福武勝幸編:みんなに役立つ血友病の基礎と臨床(改訂3版), 医薬ジャーナル社, p.42, 2016
3)医療情報科学研究所:病気がみえる vol.5 血液(改訂3版), メディックメディア, p.282, 2023
凝固因子1)(血液凝固因子)
血液が凝固する過程に関わる物質で、12種類が認められています。これらの因子はタンパク質で、発見された順にローマ数字で名前がつけられています(第Ⅳ因子は例外で、タンパク質ではなく、カルシウムイオンです)。血友病Aでは血液凝固因子のうち第Ⅷ因子が不足しており、血友病Bでは第IX因子が不足しています。
クリスマス病1)
クリスマス病は、血漿トロンボプラスチン因子(PTC)がないことによって引き起こされる出血性の病気として発見され、名称は、1952年にBiggs医師が発見した患者の姓である「Christmas」に由来します。後に、この疾患は第IX因子の欠乏によるものであることが明らかになり、それまでに知られていた古典的血友病(血友病A)とは区別されました。現在では、血友病Bという名称が用いられています。
血液凝固カスケード
血液凝固カスケードは、さまざまな血液凝固因子が連鎖的に反応し、最終的にフィブリン血栓を作る反応(血液凝固反応)のことです1-3)。
ここでは血液凝固反応の異常を調べる検査などで利用される生体外(試験管内)での血液凝固反応を解説します2,3)。
血液凝固因子は、普段は活動していない状態で血液中に存在していますが、出血によって凝固反応が開始されると、活性化されます1-3)。そして、活性化した凝固因子が次の凝固因子を活性化させる、というプロセスを連鎖的に繰り返します1-3)。
血液凝固カスケードは、反応が開始されるきっかけによって、大きく「内因系」「外因系」の2つの経路に分けられ、それらが最終的に「共通系」という1つの経路に合流します2,3)。
外因系(第Ⅲ・Ⅶ因子)1-3)
外因系は、切り傷などで皮膚やその下の組織が傷つくと、通常は血液と接触することのない細胞膜上の「組織因子(第Ⅲ因子)」が血液中に流れ込みます。これが引き金となり、血液中に存在する活性型第Ⅶ因子を活性化させ、共通系の最初の段階である第Ⅹ因子を活性化させます。
内因系(第Ⅷ・Ⅸ・Ⅺ・Ⅻ因子)1-3)
内因系は、血管の内側の壁が損傷し、血液が異物(検査の試験管のガラスなど)に接触することで開始される反応経路です。まず、この接触を感知して第Ⅻ因子が活性化(Ⅻa)します。続いてⅫaが第Ⅺ因子を活性化(Ⅺa)させ、さらにⅪaが第Ⅸ因子を活性化(Ⅸa)させます。活性化した第Ⅸa因子は、補酵素として働く活性化第Ⅷ因子(Ⅷa)の助けを借りて、外因系と同様に共通系の第Ⅹ因子を活性化させます。
共通系(第Ⅰ・Ⅱ・Ⅴ・Ⅹ因子)1-3)
共通系は、内因系と外因系の両経路が合流する最終段階です。両経路によって活性化された第Ⅹ因子(Ⅹa)は、第Ⅴ因子と結合し、血液中のプロトロンビン(第Ⅱ因子)を、「トロンビン(Ⅱa)」へと変換します。生成されたトロンビンは、血液中の「フィブリノゲン(第Ⅰ因子)」に作用し、これを不溶性で粘着性のある線維状の「フィブリン」へと変化させます。このフィブリンが互いに絡み合って網目状の構造を作り、赤血球などを捕らえて、かさぶたの元となる血栓を形成します。さらに、トロンビンは第ⅩⅢ因子も活性化させ、このⅩⅢa因子がフィブリンの網目構造にしっかりと橋を架けることで、安定した強いフィブリン血栓が完成し、止血が完了します。
2)医療情報科学研究所:病気がみえる vol.5 血液(改訂3版), メディックメディア, p.250, 2023
3)白幡 聡, 福武勝幸編:みんなに役立つ血友病の基礎と臨床(改訂3版), 医薬ジャーナル社, p.40-44, 2016
血液凝固因子製剤1)
血液製剤は、輸血に使う輸血用血液製剤と治療に使う血漿分画製剤に分類されます。血漿分画製剤は、治療に必要な血漿タンパク質を種類ごとに分離して、治療に使えるようにしたものです。血液凝固因子製剤は、血漿分画製剤の1つで、血友病の治療に必要な血液凝固因子を含んでいます。血液凝固因子製剤には、ヒトの血液から作られたヒト血漿由来製剤と、遺伝子組換え技術によって作られた遺伝子組換え製剤があります。
血漿
血液に、固まらないようにする薬剤を加え、遠心分離(遠心力を利用して分離する方法)すると、細胞成分と液体成分に分離させることができます1,2)。血液の約55%を占める液体成分を血漿といい、薄黄色から無色透明の液体です1,2)。血漿の91%は水分で、残りの7%が血漿タンパクと呼ばれるタンパク質、1%がイオンなどの電解質、1%がアミノ酸、脂質、糖質、ホルモン、老廃物などです2)。血漿タンパクにはグロブリンやアルブミンが含まれます1,2)。
2)医療情報科学研究所:病気がみえる vol.5 血液(改訂3版), メディックメディア, p.3, 2023
血小板
血小板は、血液中に存在する血球成分の1つです1)。直径2〜4μmの円板の形をしていて、血球の中で最も小さい細胞です1)。巨核球の細胞質からちぎれてできたもので、核はありません1)。血小板数の基準範囲は15〜35万/μLです2)。
血管に傷がつくと、血小板はコラーゲンと結合して、血栓を作って傷口を塞ぎますが(一次止血)、この血栓はもろくはがれやすいため、十分な止血はできません1)。血友病患者さんでは、血小板の数は正常ですが、一次止血後の血液凝固(二次止血)がうまくいかないため、出血傾向になります2)。
2)医療情報科学研究所:病気がみえる vol.5 血液(改訂3版), メディックメディア, p.17, 282, 2023
血友病1)
血友病は、血液を固めるために必要な血液凝固因子が生まれつき不足している、またはうまく働かないために出血が止まりにくくなる病気です。けがや手術のあとの出血が長引くだけでなく、体の中で知らないうちに出血(内出血)が起こることもあります。
血友病には、血液凝固第Ⅷ因子が不足している「血友病A」と、第IX因子が不足している「血友病B」があります。血友病患者さんでは、これらの血液凝固因子をつくる遺伝子に変化があるため、正常な因子が作れなくなっています。
血液凝固因子を作る遺伝子は、いずれもX染色体上にあり、男性は「X染色体」と「Y染色体」を1本ずつ、女性は「X染色体」を2本持っています。1本しかX染色体を持たない男性では、その遺伝子に異常があると病気が発症しますが、女性はX染色体を2本持つため、片方の遺伝子に異常があっても、もう片方の正常な遺伝子が働くことで病気を発症しなくなります。このため、血友病の患者さんのほとんどは男性です。また、実際には、患者さんの約3割は遺伝子の突然変異によって発症するといわれています。
<症状>
関節や筋肉などの、体の深い部分の内出血が起こりやすいことが特徴です。特にひじ、ひざ、足などの関節内で出血しやすく、また、出血を繰り返すと、痛みや腫れが続き、「血友病性関節症」に進むことがあります。筋肉の中に血がたまると、神経や血管を圧迫して強い痛みやしびれを起こすこともあります。頭の中に出血が起こる場合もあるため、早めの対応が大切です。
<診断>
出血の様子や家族に血友病の人がいるかどうかといった情報に加え、血液検査によって診断を行います。血液検査では、血小板数、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、プロトロンビン時間(PT)などを調べます。血小板数やPTが正常で、APTTのみが延びている場合に血友病が疑われ、確定のために血液凝固因子(第Ⅷまたは第IX因子)の活性を測定します。
<治療>
治療の中心は、足りない凝固因子を点滴や自己注射で補う「補充療法」です。出血がみられた場合に、血液凝固因子を補充する出血時補充療法のほか、血液凝固因子を定期的に補充して出血を防ぐ定期補充療法が行われます。定期補充療法では、出血のない時から定期的に血液凝固因子製剤を補充することで、出血や関節の障害を予防できます。
血友病性関節症1)
血友病患者さんでは、同じ関節に出血を繰り返すことで、関節の内側にある滑膜(かつまく)という部分が炎症を起こすことがあります。炎症が続くと、関節の軟骨に変化があらわれ、元の状態に戻りにくくなります。これを血友病性関節症といい、主に10歳以降に生じます。症状としては痛みを伴う場合と伴わない場合とがあります。初期症状として関節の変形、骨粗鬆症が起き、軟骨の障害が進むにつれ、関節が動かしにくい、筋肉がやせる、関節が変形するなどの症状がみられます。
抗体
抗体は、免疫グロブリンというタンパク質です1)。リンパ液や血液中に放出されると、異物である病原体や病原体の出す毒素に結合して、その機能を妨げます2)。この時、1つの抗体は、1つあるいは少数の異物(抗原)にしか反応しませんが、あらゆる抗原に対する抗体が作り出されることもあります2)。また、免疫に関わるほかの細胞やタンパク質のはたらきを高める作用もあります2)。抗体のこれらのはたらきによって、病原体を攻撃し、感染をくいとめることができます2)。
血友病では、血液凝固因子製剤を投与することで、患者さんの体内で血液凝固因子に対する抗体(インヒビター)が作られることがあります3)。
2)奈良信雄監修:ぜんぶわかる血液・免疫の事典, 成美堂出版, p.76, 2017
3)医療情報科学研究所:病気がみえる vol.5 血液(改訂3版), メディックメディア, p.286, 2023
後天性血友病
後天性血友病は、自分自身の持っている血液凝固因子(第Ⅷ因子)に対して、体の中で抗体(インヒビター)がつくられてしまうことで起こる出血性疾患です1)。生まれつきによる先天性血友病とは異なり、原因となる遺伝子の異常や家族歴はなく、後天的に発症する点が特徴です1)。多くは20〜30代の女性や高齢者にみられ、出産後や自己免疫疾患、がん、薬剤などがきっかけとなることがありますが、きっかけがなく突然発症することもあります1,2)。
<症状>1)
皮下出血や筋肉内出血などが多く、時に重度の出血を起こし、出血の程度は先天性血友病よりも重度になることもあります。特に筋肉内出血が多く、関節内出血の頻度は先天性の血友病より少ない傾向があります。
<診断・検査>1)
診断は、血液検査で第VIII因子活性の低下とインヒビターの存在を確認することで行われます。血液検査では、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長がみられることが特徴です。第VIII因子活性が低下し、第IX因子は正常です。
<治療>1)
自己抗体を抑える薬(免疫抑制剤)の投与を行います。出血がある場合には、バイパス止血療法による止血治療が行われます。
2)白幡 聡, 福武勝幸編:みんなに役立つ血友病の基礎と臨床(改訂3版), 医薬ジャーナル社, p.65-66, 2016
古典的血友病1)
血友病Aのことを古典的血友病と呼んでいたことがありましたが、1963年の国際会議で血友病Aと呼ぶことになりました。血友病Aは、第Ⅷ因子が生まれつき不足している、またはうまく働かないために出血が止まりにくくなる病気です。
最終更新日 2026年2月13日
MAT-JP-2508943-1.0-02/2026