日常生活ガイド

ウイルス感染のリスクと血友病治療

【監修】日本赤十字社 中四国ブロック血液センター 所長 広島大学
名誉教授 小林 正夫 先生

ウイルス感染のリスクと血友病治療

1985年以前に血液凝固因子製剤を使用した血友病患者さんの多くが、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)やC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスに感染しました。『薬害エイズ』として、大きな社会問題になったのを記憶されている方も多いでしょう。

HIV感染から起こるエイズは、当時「死に至る病気」とおそれられましたが、1990年代後半以降、治療法が飛躍的に進歩し、エイズによる死亡者は激減しました。現在は「コントロール可能な病気」になりつつあります。

また、C型肝炎についても新しい治療法が次々と開発されており、治癒率は高まっています。

1960年代 血友病の治療は輸血しかなく、ウイルス感染は防ぎようのない合併症でした。
〜1980年代 凝固因子製剤が開発されましたが、献血などにより集められたヒトの血液が原料に使われており、加熱処理がされていなかったため、HIVをはじめとするウイルス感染が起こりました。
1985年 加熱処理によって、ウイルスを殺した凝固因子製剤が開発されました。その後も、ウイルス不活化(ウイルスのはたらきをなくすこと)やウイルス除去の技術が開発され、製剤の安全性が高まりました。
1990年代 ヒトの血液を原料としない、遺伝子組換え技術を使った凝固因子製剤が開発され、感染のリスクは激減しました。開発当初は製造過程で動物の細胞を使っていたため、未知のウイルス感染への心配がありました。
2007年〜 動物の細胞を一切使わない技術が開発され、遺伝子組換え製剤の安全性はより高まりました。現在、補充療法で使われている製剤の多くは遺伝子組換え製剤です。

合併する病気・症状

注射と併せて使用する薬