みんなの体験談
60代の患者さんに聞きましたVol.4 こんなとき、どうしてる?
人生100年時代のこれまでとこれからのこと
人生100年時代と言われる現在において、血友病の患者さんも治療薬の進歩に伴い、正しく治療を行うことで健常人と同じ生活ができるようになってきています。
日々を健やかに過ごすためにはいかに血友病性関節症を防いでいくか、また、いかに関節症と付き合っていくかを考えていく必要があります。
今回は、血友病とともに歩んでこられた60代の患者さんお二人から、これまでのキャリアについて、そして現在の病気との向き合い方、さらには将来のことについてお話をお伺いしました。
聞き手
- 伊藤俊広 先生
- (国立病院機構 仙台医療センター 感染症内科 部長)
話し手
- Jさん
- (60代、血友病A・重症)
- Kさん
- (60代、血友病A・重症)
※本ページに記載されている内容は、2026年2月27日にリモートにて座談会を実施した際のものです。
目次
医療従事者とのコミュニケーションについて
伊藤俊広 先生
主治医を含め医療従事者とは普段どのようなコミュニケーションをされていますか?
Jさん
私が通院している病院では、臨床心理士の先生にカウンセリングをしていただくことができます。病気のことに限らず、プライベートなことにまで相談に乗っていただいています。必要に応じて私の状況を主治医の先生にお伝えいただいているようです。
伊藤俊広 先生
看護師さんとお話しされることもありますか?
Jさん
はい、看護師さんともお話ししますが、多くは臨床心理士の先生とお話ししています。病院の外来に着いたら、すぐに声をかけていただいて、だいたい10~15分程度お話ししてから診察を受けるような流れです。
Kさん
私の場合はお話しするとしたら主治医の先生だけですね。長くお世話になっている先生で、製剤を受け取りに行った際に「最近どうですか?」「関節はどうですか?」などと声をかけていただいています。昨年、製剤を変更した時にはいろいろと相談に乗っていただきました。
伊藤俊広 先生
主治医が相談に乗ることが多いと思いますが、お二人は医療従事者とどのようなコミュニケーションを望まれているようでしょうか?
Jさん
日々進歩している治療に関することを知りたいですね。治験の情報にも興味がありますので、そういった新しい情報について主治医の先生とも積極的にお話ししていきたいと思います。
Kさん
かかりつけ医とは別に大きな病院にも定期的に通院しており、その時に血友病の専門家の先生にいろいろと質問して新しい製剤が私に合うかなど相談に乗っていただいています。
伊藤俊広 先生
皆さんは主治医を中心に症状や治療についてお話しされているのですね。
キャリア形成や周囲への告知について
伊藤俊広 先生
それでは次に、今日のテーマが「人生100年時代のこれまでとこれから」ということで、お二人のこれまでのキャリア形成や周囲への告知について伺いたいと思います。
Kさん
30代までは塾の講師など静的な仕事に就いていました。その頃は、血友病について真面目に向き合っておらず、周りにも私が血友病であることを話していませんでした。その後、今の会社に転職をして、自分が血友病であることを伝えました。他の血友病患者さんからのアドバイスを参考に毎日一緒に過ごす人たちには伝えておいたほうがよいと思うようになりました。とても理解のある会社なので、病気のための通院や定期的なお休みにも理解をいただきながらこの20年ほどを過ごせています。
Jさん
私は、職場では自分が血友病であることを言わずに過ごしてきました。高校生の時に自己注射を始めたため、症状がなければ頻繁に通院する必要はありませんので、伝えていなくても不自由はありません。
Kさん
私たちが高校生の頃に自己注射が保険適用になったため、私もその時に自己注射を始めました。
関節症との付き合い方
伊藤俊広 先生
普段、関節症など血友病による症状とはどのように付き合っていますか?
Jさん
正直なところいまだに上手く付き合うことができていません。どれだけ注意していても、年に1回くらいは右肘が突然出血して腫れてしまうのです。その時はとても痛いです。ぶつけないように、重いものを持たないようにいつも気にかけているのですが完全には出血をコントロールしきれないのです。
伊藤俊広 先生
定期輸注をしていても出血が起こるということは次の注射の前に起こるということでしょうか?
Jさん
そうですね。製剤の効果が切れてきているのではないかと思います。それと、かなり関節の変形が進んでもろくなってしまっているからではないでしょうか。
Kさん
私も、定期輸注によって昔経験していたような大きな出血イベントはなくなりましたが、小さな出血はその後も繰り返しています。私は30代半ばから左足の膝から下は義足を使っているのですが、時々起こる右膝関節の腫れを抑えることはできません。そのためさらに関節の変形が進んでいきます。肘や肩、膝関節には常に痛みを抱えていますが、それが当たり前になっているという感じです。
伊藤俊広 先生
少しずつ、10年単位くらいで悪くなっていく関節症について患者さんに自覚してもらうのは難しいといつも思っています。患者さんに画像で出血していることをお示しすることはできるのですが、それが長期的にみて関節症につながっていくということをどうしたらわかってもらえるのかを考えています。それが「小さな出血を繰り返さないようにしっかりと定期輸注を続けてください」につながります。症状を伴わない出血というのもあると思うのですが、お二人は、出血による痛みと関節症による痛みを区別できますか?
Jさん
痛いけど腫れはないという場合には関節症による痛みだと考えています。関節症による痛みだと思ったら製剤は使いません。痛み止めを飲んでも効果がない時は出血を疑って病院に連絡することもあります。
Kさん
長年の経験で、何となく、感覚的に出血しているかどうかはわかりますね。そんな時は無理をしないで安静に過ごすようにしています。
伊藤俊広 先生
お二人は、若い頃、運動を控えるように言われていた世代ですよね。
Jさん
はい。運動部に入ったことはありません。ただ、バイクに乗って転んで両膝を大ケガしてしまい、その時は母親にきつく叱られました。
Kさん
私も、小学校4年生の頃から膝の関節がおかしくなっていましたので、いつも体育の授業は見学していました。
普段の健康管理
伊藤俊広 先生
それでは、これまでの経験を踏まえて、何か習慣にしているような健康管理法があれば教えてください。
Jさん
血友病の治療が進歩して私たちが長生きすることができるようになったことで、いわゆる生活習慣病やがんなどの他の病気のことが気になるようになってきています。私自身、糖尿病を患っており、今、がんの治療も受けています。以前はたばこを吸っていましたが40歳になった頃に肺炎を起こしてから止めています。
Kさん
私は幸いにして内臓系の大きな病気にはかかっていませんが、この年になって老後をいかに健康に過ごせるかを考えるようになってきました。血液検査の結果が悪いと気にかかります。血友病に関して言うと、膝関節への負担を考えて、最近増えてきた体重を減らさないといけないなと思っています。
伊藤俊広 先生
メンタル面ではいかがでしょうか? どのようにして血友病という病気と向き合われてこられましたか?
Kさん
「もしも自分が血友病でなかったら…」と思ったことはあります。特に若い頃はいろんなことを諦めなければならないことがつらかったです。
Jさん
痛みに対する「諦め」というのは確かにありますね。それでも自分が血友病であることは変えようがない事実なので、できることをやりながら受け入れていくしかありません。若い頃、私のわがままを受け止めてくれた家族や周囲の人たちには本当に感謝しています。
Kさん
私たちの世代は本当に痛みに悩まされ続けました。製剤を注射して、痛み止めを飲みながら耐えるしかありませんでした。3日ほどは痛みが続いて一睡もできないようなこともありました。
伊藤俊広 先生
その点、今の若い人たちは恵まれています。出血エピソードの経験がないという患者さんも珍しくありません。お二人はそのような痛みに耐えてきたからこそ血友病という病気と真剣に向き合うことができているのだと思います。
血友病コミュニティとの関わり
伊藤俊広 先生
患者会や血友病コミュニティでの関わりで何か得られたことがあれば教えてください。
Jさん
患者会には入っていますが、私はあまり参加できていません。
Kさん
私はここ20年近く患者会の会長をさせていただいており、そのおかげで全国の血友病患者さんとのつながりができています。自分たちの患者会にはなかった経験や知識を他の患者会から得られることもあります。最近では、自然災害が起こった時の現地の様子を全国的なネットワークから共有できるようにもなってきています。
伊藤俊広 先生
患者会では、子どもやご両親などとの世代間交流も期待できますよね。
将来への備えと準備について
伊藤俊広 先生
将来についてはどのように準備されていますか?
Jさん
私は、先のことを心配するのではなく、目の前の大切な毎日を楽しく生きていきたいといつも思っています。
Kさん
体力があるうちに、近々、右膝の人工関節置換術を受けておきたいですね。動ける動けないで気持ちの持ちようが随分と変わってくるように思います。そして今の仕事をもうしばらくは続けていきたいです。患者会の仲間からも関節置換術を勧められています。
Jさん
私も両膝が人工関節ですが、膝の痛みがなくなり本当に手術してよかったと思っています。
伊藤俊広 先生
痛みがなくなることに加えて、関節の可動域が広がって、そこにリハビリテーションで筋肉を付けていけば日常の活動性が改善します。動くことは生活習慣病の予防にもつながります。
次世代へのメッセージ
伊藤俊広 先生
最後に、若い世代の血友病患者さんに向けてのメッセージをお願いします。
Jさん
今は早いうちから定期輸注ができる時代です。しっかりと定期輸注をしておけば血友病のない人と変わらない人生が送れるわけですから、その恩恵をしっかりと受け取って欲しいと思います。
Kさん
そうですよね。きちんと治療を続けて、人生前向きに、自分の可能性を広げていってもらいたいです。
伊藤俊広 先生からのメッセージ
これまで、関節症とともに60年以上を過ごしてこられた血友病の大先輩たちからの今回のお話が、若い世代の人たちに届くとよいなと思っています。今の小さな出血が、それを繰り返しているうちに取り返しがつかないことになってしまうのです。お二人が関節の痛みと向き合いながら、将来を見据えながら今を大切に過ごされていることがとても印象的でした。人生100年時代、これからも血友病とともに生きる皆さまと一緒に血友病と向き合っていきたいと思います。
トピック別に聞きました「人生100年時代のこれまでとこれからのこと」
最終更新日 2026年6月12日
MAT-JP-2501593-5.0-06/2026